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その人がその場所で感じた色彩 [博物館・美術館での出来事のようだ]

 好きな日本画家は誰ですかと訊かれれば、東山魁夷と答えます。
 特に好きなのが『晩鐘』という作品です。これは題材は日本のものでもないし東山魁夷の得意な青系の色使いでもないものながら、フライブルク大聖堂とそれを囲む町の雰囲気が茶系統で表され、圧倒されるのです。彼にとっては少し異色の作品かもしれませんが、最良の表現方法でこの世に出されたのでしょう。強く印象に残っています。
 さて宮城県美術館で『東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展』が開催されていたので、仕事の合間に行ってきました。障壁画展というもの自体が珍しいもので、実際に滅多にない貴重な展覧会でした。それぞれの間のために描かれた襖絵の数々は、和室を美しい空や海などに彩られた異空間に変えてくれます。
 この中で、海や森を題材にしたものはその東山魁夷の代表ともいえる青系の色使いで、それはそれで素晴らしかった。一方、桂林や揚州の山や木を描いたものはモノトーンで、墨で描いたのだとか。彼にとって、こういう作品を描くのに墨を使用したのは初めてだったのだそうです。中国に取材の旅に行き、その風景を絵として残すには墨が最も適切と考えたような話が、作品とともに展示されていた創作ノートに綴られていました。
 私がかつて感動した『晩鐘』もそうですが、題材を表現する際に、自身にとってあまりないやり方を選び取れることも、大舞台で新しいことを恐れず挑むことも、どちらも大切なのだと学ばされた展覧会でもありました。
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