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10年夢blog 第7回 [GBA作品(小説)]

10年夢blog 第7回

 異変と言っては大袈裟か。でも翌日に同じ記事を見たら、謎のトラックバックがついていたのである。
 トラックバックがつくこと自体は別に異常じゃない。昔売っていた妖しいメーカーのコーラの夢を見てしまったことを書いたら、その手のコーラの評論を書いた記事がトラックバックされていたこともある。対応に困った末に、結局送り返しもせずそのままにしておいたのだが。
 或いは出会い系やいかがわしい宣伝のスパムトラックバックがついていたことも一度ではない。
 このトラックバックを異変と思う所以は、リンク先に行ってみれば分かる。


未来予想:1/18
 こういう夢に影響されるというしゅーさんは多分明日、黒い付録に悩まされるであろう。


 何だって俺の未来の予想なんかされなければならないんだろう。大体そんなもの、コメントに書けばいいじゃないか。まあ、書かれても返答に困るんだけど。
 しかも、このblogにある記事はこの人様対象予言の一件だけなのだ。俺の予言をするためだけにこんなものを作ったのだろうか。
 気味が悪くなってきた。良くある荒らしコメントよりも質が悪いのじゃないだろうか。
「TBありがとうございました。でも余計なお世話であると思われます(笑)」
 という半分優等生のコメントをつけようかとも思ったが、ウェブ上のトラブルの大半は無視が一番ということを思い出し、放っておくことにした。

 その晩は夢を見なかった。覚えていなかったというべきか。だから何も気にせず一日を過ごすはずだったが、俺の翌日は夢より質の悪いものに支配されることになった。
 無視したはずなのに、「黒い付録に悩まされるだろう」の文句が気になって仕方ない。道行く途中黒猫に出くわせば前を横切られないうちに急いで通り過ぎ、コーヒーはブラックでは飲まず、同僚の黒川からは呑みに誘われても付き合わない。
 そんなことに神経を使うことになり、しばらく忘れていた湿った日常の感覚が戻ってきた。
 それでも何とか夕方まで何も起こらず過ごせた。仕事自体は快調ではなかったけれど、何もトラブルはなかった。だからあの予言トラックバックで言われていた「悩まされる」というのは、その予言自体に悩まされて一日を過ごす、ということなのだろうか。つまるところ、夢が変なトラックバックに変わったというだけで、俺の性質は変わってはいなかったのだろうか。折角夢を利用したblogで快適な生活が手に入ったと思ったのに。
 …と、後ろ向きに考えるのが悪いんだな。悩んでしまったらあの変な予言者の思うつぼだ。そう思った頃には俺は食堂のテーブルに着いていた。何だかあれこれ考えていたら面倒くさくなっていたので、ここでカレーを食べてから帰ろうとしたのであった。まずは夕食に専念しよう。
 そう思って一口食べたところで、舌に黒い彗星が落ちてきた。カレーは激辛だった。
 …どうも先ほど考えながら何種類かあるカレーメニューをカフェテリア方式で頼む際に、普通のカレーを指したつもりが、近くのセイロンブラックカレーを指さして「これ下さい」と言ってしまったらしい。心の準備ができていなかった俺にとっては寝耳に水だった、いや、水が欲しいのはこれからだ、辛くてたまらん、何とかしろ。
 実に屈辱的なかたちで、俺は予言者にやられてしまった。

(続く)


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