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餌付けという存在理由 [映画で考えることもあるようだ]

 今日は「亀は意外と速く泳ぐ」という映画を見てきました。不条理コメディとレゾンデートル論議を受け入れられる方なら楽しめる映画だと思います。上野樹里や蒼井優が実に吹っ切れた演技をしていて良いですね。
 この劇中で亀に餌をやったり蟻に餌をやったりしている場面を見て、ひとつ思い出したことがあります。東北大学の川内キャンパスに、カラスに餌をやり続けるお婆さんがいたことを。
 このキャンパス内のカラスは一時期全国的に有名になりましたように、クルミを車に割らせて食べるという頭が良いというか厚かましいというかそんな特徴を持っています。しかしこの婆さんはそのカラスどもの思考をひとまず脇に置いておいて、毎日ひたすらパンと思われる餌をやり続けていたのでした。
 この人は身なりがとにかく特徴的で、ヒッピー風の衣装で両手に餌の入った巨大なビニール袋を抱えているので嫌でも存在が分かります。更にカラスに餌をやるときにも奇声を上げています。何か語りかけているのかもしれませんがちゃんと耳を傾けたことがなかったので詳細は不明です。問題は餌を持ったそのお婆さんがやってくるとカラスの方から近づいてくるとかそういうのではなくて、むしろお婆さんがその辺にいるカラスめがけて餌を投げつけてカラスがしばしの間の後に食べるという光景がいつも展開されていたことでした。双方向型のコミュニケーションは果たして取れていたのでしょうか。
 ところでキャンパスと仙台市街の間でバスを利用したときに、私はこのお婆さんと同じ車両に乗ったことが何度かあります。その時にいつも目撃したのは、そのお婆さんは近くにいる人に突如としてしかも一方的に話しかけていたのでした。遠くから見たことがある限りでは、話しかけられた側はいつも困っていたような。話自体が苦手な私はもちろん近くに座ったことはありませんでした。それこそ私は自分を動物に例えるとカラスであると思っているのですが、話の餌捲きに応じようという気は結局一度も起こりませんでした。
 今思えばあの人は、何らかの形で寂しい日を送っていたから、カラスなりバスの同席者なりといつも話をしようとしていたのかもしれません。たとえその方法に問題があったとしても。あの映画の登場人物のように、何らかの秘密を持っていたのかな…
 そんなことを思い出してみたところ、今年になってから同キャンパスを通ったとき、私はそのお婆さんの姿を一度も見たことがないのに気づきました。


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