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顔と霊魂 [博物館・美術館での出来事のようだ]

 盛岡に行った際に、岩手県立美術館でホルスト・アンテス展を見てきました。
 このアンテスというドイツ人芸術家はいつも大きな人間の横顔で精神世界を表現するのです。そのためその硬質で得体の知れない表情をした頭部が繰り返される作品群を見ているうちに、本当にこの頭を割ると宇宙空間が表れるのではないかという気になってしまいます。そんな不思議な深みある展示でした。
 で、このアンテス自身の作品の外に、彼の蒐集したカチーナの展示もありました。カチーナとは何かというと、ホピ族をはじめとしたアメリカ先住民の伝承に登場する精霊をかたどった人形のことなんですね。実は私は10歳の時にアメリカ・アリゾナでこの人形に出会い強烈な印象を受け、この歳になるまでそれを覚えています。というわけでこの展示会で20年ぶりにカチーナと出会えたわけです。高さ20-50センチメートルの人形は細かい衣装と装飾を身につけ、どれも個性的。ある者は動物の顔をつけ、ある者は太陽の象徴を抱き、ある者はもはや何に捧げられているのかわからない。一つ言えることは、どれもその小さな体に宇宙を宿しているということ。でなければ前後左右前方向からじっくり眺めたい、などという気持ちにはなれません。
 変な顔で表現を続ける芸術家と、素朴なようで細かい人形。アンテスは内部に深く広い宇宙があるというところに共通性を見つけ、コレクションを始めたのでしょうか。だとすればこれは必然の出会いだったんでしょうな。


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